高等部泉中央教室
順番は必ず特殊→一般.
こんにちは,森山です.
中3数学で勉強する「中点連結定理」を覚えているでしょうか?
三角形の2辺の中点を結んだ図形に関する定理です.
この中点連結定理についてですが,中3数学の教科書の掲載順では
「三角形の相似条件」→「三角形と比」 という構成なので,
中点連結定理に関しては「相似な三角形の組の対応する辺の比」に基づいて説明がなされます.
しかしながら,実はこの中点連結定理の説明は,鵜呑みにするとまずい内容があるのです.
中点連結定理は言ってしまえば,「三角形と比」の内容の特殊な場合です.
だから,「三角形と比」というより一般性の高い概念を先に勉強することで,
中点連結定理が特殊なケースに映えるのですが…… 実は定理の成り立つ順番は逆です.
どんなものも,「特殊」なケースを先に研究してから,それをもとに一般化していきます.
(このプロセスを「帰納」と呼びます)
つまり,定理の成り立つ順番は,特殊なケースである「中点連結定理」から出発して,
より一般的な「三角形と比」,ひいては「相似な三角形の性質」に発展していきます.
「中点連結定理」を「相似な三角形の性質」に基づいて導出しようとすると,
どういうことがおこるでしょう?
「相似な三角形の性質」は「中点連結定理」から出発して導かれる性質ですから……
つまり,「中点連結定理」から出発して示される性質を利用して,
「中点連結定理」という出発点そのものを導出しようという珍妙なことが起こります.
これでは,「中点連結定理」の証明のために「中点連結定理」が必要になるという
ねじれが生まれてしまうので,説明が破綻します.
このような論法は「循環論法」と呼ばれ,破綻している説明の代表例でもあります.
高校受験の世界では,中点連結定理は「平行な1組の線分」を導く道具であったり,
「辺比1:2」を導く道具だったりしますが,実は専門的な数学の領域では,
非常に重要な定理であるわけです.
他にも,「ロル(Rolle)の定理」と「平均値の定理」(数学Ⅲ)の関係,
もこれと同じ種類の話になります.
気になった人は調べてみましょう!
高等部泉中央校 森山 昇平